こんにちは。
東京・吉祥寺にて、50代女性に向け「内面と外見がマッチする装いをご提案する自宅サロン」アンドレアを主宰しております、松前恵美子です。
先月WWDに掲載された「アルマーニの書簡」という一文はご存じでしょうか。
2020/4/10のWWDニュース:【ジョルジオ・アルマーニからの公開書簡 「今回の危機は、業界の現状をリセットしてスローダウンする貴重な機会」】のリンクは記事の最後に貼らせて頂いております。よろしかったらお読みください。
このニュースを読んだ時に、今日ご紹介する内容の記事を、すぐに書こうと思ったのですが
推敲を重ねているうちに、1か月弱経ってしまいました。
何に迷っていたかというと…
私は、ファッションの仕事をしているにもかかわらずハイブランド品を持っていない、
そういう自分を恥じていたことを晒すことになるからでした。

持っていないというか、私の身の丈に合っていないので「持てない」ということです…言葉を誤魔化してはいけませんね。
たとえば、ハイブランドのバッグはとても素敵ですし、やはり持ちたいと思います。
でも1個数十万のものは、とても購入は出来ません。かといってメルカリ等で手に入れることや、ブランドレンタルを利用することにも大きな躊躇いがありました。
けれど、コロナ禍で一旦世間がリセットされたこの時期、
偶然「アルマーニの書簡」を読んで、私の本質である「自分が何に価値観を持っているか」に気付き
ハイブランド品を持っていない自分を受け容れる事が出来ました。
これは自分にとって、小さいけれど重要な1歩となりました。
今日なら書けそうなので、書いてみますが、上手に文字に出来るか自信はありません。
でも、コロナ禍が終息を迎えた時に、素直な自分でお客様の前に立ちたいので、
私という人物を知っていただくために、頑張って書きます。
お読みいただければ嬉しいです。
ブランドとの最初の出会い~頑固な父の前に撃沈の巻~
私の父は、一人っ子である私には甘い父でしたが(現在84歳です)
唯一、ブランド品に対する姿勢に厳しいポリシーを持っており
私にもそれを受け継がそうと、1歩も譲らない鋼のような強さがありました。
それに気づいたのは、私が高校生の頃です。
当時ハマトラファッションが大ブームでした。

横浜に住んでいた私は、頻繁に元町に行っては
フクゾーのトレーナーやスカート、ミハマのカッターシューズなどでオシャレを楽しんでいましたが、
残る三種の神器だった、クレージュのバッグが欲しくて欲しくてたまりませんでした。
↓ ↓
これ流行りましたよね~。
友人たちもそれぞれ好きな色のクレージュを持っていましたので、
私も父に買って欲しいとねだったところ…

買う気はない。パパの目の黒いうちは持つな!!
…と、烈火のごとく怒り、とうとう1歩も譲りませんでした。
それが、私のブランドとの出会いでした。
苦い出会いでした。

父がブランドを買ってくれたのは、私が20歳を過ぎてからのことでした。
父は私が幼い時から、仕事柄海外出張の多い人でした。
おしゃれにも詳しい人で、実際身につけるものは一流のものが多かったです。
ただし一貫して「ロゴがデザイン化されていないもの」に限って購入していました。
父が買ってくれたブランド品は…
当時、父が買ってきてくれる海外出張のお土産は、
- イエーガーのニット
- スペインの、ブランドが一見して分からない革バッグ
- フランスの、ブランドが一見して分からないストール
などなど、若い娘がワクワクするようなものではありませんでした⤵⤵⤵
その後、結婚する時には「一生ものだから」と、初めて幾つか持たせてくれましたが、
あくまでも父のポリシーは貫かれ(笑)
- バーバリーのオーバーコート
- ディオールの紺のスーツ
- 和光のイタリア製バッグ
、とまぁ、こんな感じでした。

考えてみれば、誰も「いわゆるブランド」を持っていなかった
また、母方の親戚は、本当にオシャレな人が多かったです。
ダンディなおじ様たちと、モダンなおば様が多かった。
でもそういえば、誰一人としてわかりやすい「いわゆるブランド」物は持っていなかったんです。
祖父がよく着ていたスーツは全てオーダーメイドでしたし、家で着る和服は紬でした。
祖母もブランド品は一つも持っていなかったけれど、
和服などは、今では買えないようなものを私に取っておいてくれましたし、
カメオやサンゴなどのアクセサリーは、今では私の宝物です。

結婚した夫はサラリーマンですし、ブランドに興味のある人ではなかったので、
「○○記念日に買ってくれた!」などという経験は一度もありません(^-^;
生まれた子供たちも、2人とも男の子でしたから、ブランドが欲しいとは言いませんでしたし
それよりも、教育とか経験とかに費やしてやりたい、と思う私でした。
結局、父の頑固な価値観が私にもまんまと受け継がれていたのです。

と、偉そうに書いてはいますが、幼稚園ママや当時出会う保護者の方たちは、皆さんブランドバッグを当たり前のようにお持ちで、持っていない=持てない自分を恥ずかしく思うことも正直ありました。
なので、バッグはよく六本木にある「TIA MARIA」さんで購入していました。TIA MARIAさんは、ハイブランドに似通ったデザインを、質の良い革で作り、手の届く価格で販売されているお店です。
イメージコンサルタントになって、またザワついた私
このように、
- わかりやすいロゴの付いたブランドは持たせてもらえず育ち、
- 欲しいと思っても、1個数十万もするようなバッグは買えない現実。
- でも一方で、同じお金なら子供の教育とか経験とかに費やしたい。
という、相反する内面を持ち続け、50歳を越えました。
そして、イメージコンサルタントや、顔タイプ診断協会認定講師としての道を歩み始めたわけですが(協会認定講師は現在は辞しています)
ここで、また私の心の声がザワツキ始めました。
悉く出会う協会やイメコンの皆さんが、ブランドをお持ちだったからです。
顔には出さないようにしましたが、正直言いますと…劣等感も抱きました。
でもどう逆立ちしても、私にはエルメスもセリーヌもグッチも、手は届きません。

そんな私が唯一自分で買ったハイブランド品
このままではいけない、と思っていた昨年の11月、長男の卒業セレモニーに参列するため、イギリスに行くことになりました。
セレモニー当日には、ディオールのスーツを着ることにしましたが、何か新しいものを身に付けて、門出をお祝いしたい気持ちになり、
せっかくなので、出発日に羽田の免税店でスカーフを買うことに決めました。
迷わずエルメスに行きましたが色々見せて頂いてもピンと来るものがなく、ハイブランドのお店をひと通り見て歩きました。
その中で、一目惚れしたのがこちらのシャネルの新作でした。
免税店といっても、決してお安い値段ではありませんでしたが、
子育てを頑張ってきた自分へのプレゼントと、
今後の自分へのエールのつもりで購入しました。
早速結んでみたのがこちらの写真です。我ながらよく似合うと思います^^
このスカーフ、似合うだけではなく思いがけない気持ちの変化も起こしてくれました。
たった1枚のスカーフだけど、
背筋が伸びるような、自分を底上げしてくれる高揚感をもたらしてくれたのです。
それは自分の足で選び、自分のお金で購入したせいもあるかもしれません。
今までの自分とこれからの自分、両方にエールを送ってくれているようでした。
「アルマーニの書簡」を読んで
内心持っていた劣等感を、たった1枚のスカーフが払拭してくれました。
自力で選んで購入した「かけがえのない1枚」がこんなに心を豊かにしてくれるとは。
その経験を経て、やっと劣等感から解放されました。
ただ、この自分の内面をちゃんと言葉では説明できない自分もいました。
そのような心境の時に、「アルマーニの書簡」を読んだのです。
特にこの部分にドキッとしました。
「私は常に時代を超えたタイムレスなエレガンスを大切にしてきたが、それは美的感覚の問題だけではなく、長く着られるように服をデザインして生産するということでもある。」
私は、わかりやすいバッグやお財布などで、ハイブランドを手には出来なかったけれど、
父によって「価値あるものは、年月が経ってもタイムレスで生き続ける」という真理を、既に知っている。
両手に余るほどのブランド品を持たなくても、何ら恥ずべきことではないし、
数少ないけれど、それぞれの価値を知っている、知っていて大切に使い続ける私は
これからの時代、もしかしたら誇ってよいのかもしれない、とやっと気付くことが出来ました。
アルマーニの言う「エレガンス」は「品性・品格」に通ずると思います。
私が人生で最も価値を感じるのは「品性・品格」なのです。
書簡を読んで背中を押された気持ちになりました。
おわりに
今日は、ハイブランド品を持っていないことを恥じていた私が、紆余曲折を経て、自力で1枚のスカーフと出会い、
「価値あるものは、年月が経ってもタイムレスで生き続ける」ことを既に自分は知っていたことを思い出し、
やっと自分を受け容れる事が出来たお話をご紹介しました。
「持っていない自分が恥ずかしいから買う」のではなく「かけがえのない一品に出会ったから買う」自分で在りたいと思います。
そして、もう一点。
昨年と一昨年、イギリスを訪ねた時に感じた、
「本当の価値観は、わかりやすいものではなく、長年培われてきた土台にしか成り立たない」という感覚です。
田舎町であっても隅々に感じた上質な空気感は、ちょっと言葉では説明しがたいですが、
「アルマーニの書簡」に書いていあることに相通じるものがある、と確信しています。
そこに価値を見出せる自分をもっと認めよう、受け容れよう
そう思えたのでした。
上手に文字に出来たか、やはり自信はありませんが、
この内面の経験は今後のサロンの在り方にも通じていくと確信しているので、また次回に書きたいと思います。
色々と、気付きをくれた「アルマーニの書簡」是非お読みください。
2020/4/10のWWDニュース【ジョルジオ・アルマーニからの公開書簡】はこちらから